【校長室だより】 「きっかけ」を見逃さない

| 教育エッセイ

毎週月曜日に行われる児童朝礼では、毎回、校長先生から全校児童にお話があります。今週の校長先生のお話を紹介します。

6月13日 月曜日 「きっかけ」を見逃さない

 今日は、昨年ノーベル医学生理学賞を受賞した大村智(さとし)先生のお話をします。

 カビや酵母、細菌などの微生物がつくる物質は数十万種類あり、その中には有用な薬になるものがあります。しかし、有用な物質をつくり出す微生物を見つけ出すのは、とても難しいことです。大村先生はその困難に挑戦し、エバーメクチンという物質をつくる微生物を発見しました。

 先生はいつもポリ袋を持ち歩き、土を採取して研究室に持ち帰り調べる作業を繰り返しました。今回、発見した微生物は、あるゴルフ場の土から採取したものだそうです。エバーメクチンからつくられたイベルメクチンという薬は、アフリカなどで蔓延している河川盲目症の治療に使われ、毎年2、3億人の人を救うことができているそうです。

 大村先生は最初からの研究者ではなく、社会人としてのスタートは、昼間働いている生徒が学ぶ定時制高校の理科の先生でした。ある夜、仕事で疲れながら油がしみついたままの指先で、真剣に試験を受けている生徒を見て胸を打たれ、自分も「勉強したい。もう一度学び直そう」と決心したそうです。

 そして、大学と大学院で学び直し研究者になり、ずっと「人の役に立つ物質を見つけたい」という強い思いで研究に打ち込んできたそうです。 誰にでも「自分はこれをするんだ」と、将来の生き方を決定するきっかけがあるそうです。でも多くの人は、その瞬間に気づかないことが多いのかもしれません。

 大村先生には油がしみついた生徒の指先を見たことが、自分の生き方の方向を変えるきっかけになりました。そのきっかけに自分が気づき、自分で決めて行動したのです。ノーベル賞を受賞したときのコメントには、「何か一つでも、人のためになることができないかとずっと考えていた」とありました。

 迷っているときに自分らしい道を歩み始めるきっかけ。目標に向かって信念を持って進もうとするきっかけ。皆さんにも、そんなきっかけが必ずやってきます。大切なことは、自分を信じて最後までやり続ける強い気持ちです。自分の大切なきっかけを見逃さない近小生であることを期待しています。

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